3.神社の建物構成と名称


神社の神域にはいろいろな建物が配置されている。これらの建物は、それぞれ重要な役割を持っている。

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手水舎(ちょうずや)


談山神社(奈良県桜井市)手水舎

水盤舎ともいい、神に詣でる前に手を清め、口をすすぐところ。

拝殿(はいでん)

拝殿は、拝殿は祭神への遥拝や神事(祭祀)・拝礼を行う建物のこと。祭祀の時に神職などが着座するところでもあり、吹き抜けとされる場合が多い。通常、神社を訪れた際に見るのはこの拝殿で、一般の参拝は拝殿の手前で拍手を打って行なうが、祈祷などの際は拝殿に昇る(昇殿)こともある。

拝殿は、一般に本殿よりも大きく建てられ、床を張るのが一般的であるが、中央が土間となっており、通り抜け可能な「割拝殿」(国宝となっている桜井神社 (堺市)のものが著名)もある。舞殿、神楽殿、社務所などを兼ねることもある。

桜井神社 割拝殿(国宝)

拝殿には、横拝殿、縦拝殿、割拝殿などがある。

神社によっては拝殿がないところ(春日大社・伊勢神宮など)や、2つ持つところ(伏見稲荷大社・明治神宮など)もある。2つある場合は、手前を外拝殿(げはいでん)と呼び、奥のものを内拝殿(ないはいでん)と呼ぶ。鈴(鈴の緒)や鰐口がある場合もある。

拝殿の起源

拝殿の成立は本殿よりも後である。現在でも伊勢神宮・春日大社・宇佐神宮・松尾大社など拝殿を持たない古社は多い。 拝殿は祭神の祭祀のための施設であるが、本来、神社の祭祀は本殿の正面の露天の祭場で行なわれていた。本殿は、その起源を祭壇に求められるように、祭祀の対象であって、祭祀を行なう場ではなかったのである。

祭祀において、神職らは祭場の左右に着座し、そこから中央の祭場に赴いて祭儀を行なったのだが、祭場が屋内になると、中心の祭場が幣殿となり、神職着座の場が回廊となった。回廊の入口には楼門が建てられた。このように祭祀の形態にあわせて、楼門と回廊と幣殿が建てられたが、これらを持つに至らない小規模な神社は、やがてその機能を圧縮して、ひとつの社殿にその機能を備えさせることにした。これが拝殿である。


但馬国一宮 出石神社拝殿

横拝殿

拝殿自体が横長の建物で、本殿の方を向いて着座する。


大神神社拝殿 (奈良県桜井市)

縦拝殿

棟の方向が正面に当たるが、むしろ本殿への通路的な役割を果たしているようである。


大井神社(京都府亀岡市)

割拝殿(わりはいでん)

横拝殿の中央部分を土間として、前後に通り抜けられるようになっている。神門を兼ねて本殿から入口に離れて建てられている。

  
石上神社摂社出雲武雄神社割拝殿(奈良県天理市 国宝)  桜井神社 割拝殿(大阪府堺市 国宝)

幣殿 (へいでん)

幣殿は、祭儀を行い、幣帛へいはくを奉る社殿である。本殿と拝殿との間に位置し、両者をつなぐような構造になっているのが特徴である。中殿ともいう。大きな神社では本殿の前に、幣殿と拝殿と呼ばれる建築物があることが多い。

『幣殿』というのは『幣帛(麻や絹などの織物の意味)』という神への供物をお供えするための建物のことで、独立していることもあるが、拝殿と一体になっていることが多い。幣殿がない神社もある。

中嶋神社(豊岡市)幣殿 拝殿と幣殿が一体になっている例

回廊(廻廊、かいろう)

社殿を取り囲む屋根付きの周り廊下。

式内 日御碕神社回廊(重文)(島根県出雲市大社町日御碕455)

勅使殿

天皇の特使である勅使が用務を行ったり、控えの場として使われる建物で、一定の建物の形式はない。

祭文殿

この建物も勅使が派遣される神社に設けられる建物で、勅使がお参りするところ。

祝詞殿(のりとでん)

神主が祝詞を奏上するための建物で、祝詞屋とか祝詞舎とも書く。

・賀茂別雷神社祝詞殿(京都市)など

神楽殿

神楽を舞うための殿舎。古くは特に神楽のためにあったわけではなく、社殿の一部を利用したり、境内に一画を利用した。舞殿ともいう。


・賀茂別雷神社摂社新宮神社神楽殿「賀茂の水まつり」7月22日(京都市北区上賀茂本山339

車舎(くるまや)

祭司や勅使などの参拝のとき、牛車を入れておく建物。

・春日大社車舎

酒殿(さかどの)

神社内にあって神酒(みき)を醸造する建物。伊勢神宮では御酒殿(みさかどの)という。もちろん現在は酒を醸造することはない。

・春日大社本社酒殿

神饌所(しんせんじょ)

別命、供御所(くごしょ)または御料屋ともいう。神饌(神の御食)を調理するところ。贄(にえ)殿・竈(かまど)殿・盛殿(もりどの)・御炊殿(みかしきどの)・忌火屋(いむびや)殿などを付属させているところが多い。

神輿庫(しんよこ)

神輿舎、神輿倉ともいう。神輿を収蔵しておく建物で、祭礼時には神輿を安置しておく。

直会殿(なおらいでん)

直会とは、祭儀が終わったあと、神饌の下り物などで飲食することをいい、これを直会式という。九丈殿・五丈殿・四丈殿などと呼ばれることもあり、長い建物が多い。

・賀茂別雷神社直会所(京都市)

・春日大社本社直会殿(奈良市)

宝庫

その名の通り神社の宝物を収納しておく倉庫のこと。宝蔵、神庫などともいう。

手向山八幡宮(奈良市) 宝庫 (国重要文化財)

参考

黒田 龍二 神戸大学工学研究科教授  「建築史からみた神社の歴史と信仰」放送大学兵庫学習センター

ウィキペディア

神社建築

1.社殿の成立
2.境内の造り
3.神社の建物構成と名称
4.社殿の様式
5.神殿(本殿)の部位
6.鳥居とその種類
7.塀・玉垣
8.狛犬