8.狛犬

神社の参道や拝殿前に置かれている狛犬。なぜ神社に狛犬が置かれているのかはよく分かっている人は少ないでしょう。狛「こま」を高麗として朝鮮半島から来た犬だと考えたり、隼人(むかしの九州南部)が犬の声をまねて、天皇の警固したことにちなむと解釈したりしています。

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狛犬の起源

しかしその本当の起源は、仏像の前に2頭のライオン(獅子)を置いたことにあり、狛犬の形はそこから来ているのです。狛犬は「こま高麗の「犬」ではなく、あくまでも「こまいぬ」という空想の動物なのです。獅子(ライオン)も、昔の日本人は実物を見たことがありませんから、同じように空想上の動物だったのです。

いろいろな説がありますが、現在有力視されているのは、仏教がインドにはじまり、シルクロードを通って中国に入り、やがて朝鮮半島を経て、日本にもたらされたことは、君たちもよく知っているでしょう。6世紀のことです。当時、仏教を伝えるということは、仏像を伝えるということでもあったのです。そして仏像とともに、その前に置かれた2頭のライオン(獅子)も日本に入って来ました。こうして仏像の前に2頭の獅子を置く習慣が始まったのです。しかしこの段階では、置かれたのは「獅子」2頭で、「狛犬」ではありませんでした。

平安後期から鎌倉・室町時代に作られた小さな木製の神殿狛犬、あるいは金属製のもので社殿の屋内用に置かれていました。古い狛犬は宮中や格式の高い神社の社殿内にあって庶民は見られませんでした。

石造りの狛犬が神社の参道に置かれるようになった江戸時代以降で、狛犬は宮中から一般大衆の世界に降りてきたわけです。

元々の狛犬は「獅子・狛犬」の組み合わせ

中国などでは左右は同じ獅子ですが、この阿吽の組み合わせが出来たのは日本特有の形式で、平安時代の初めです。奈良時代までは獅子2頭だったのですが、そしてそれが、宮中(きゅうちゅう)、神社、お寺などに置かれました。仁王像も狛犬も、神(君主)を守護するという役割は同じなので、守護獣としての獅子・狛犬も阿吽の形にしたと思われます。私たちが今見る狛犬の起源はこんなに古いところにあるのです。

 

  

左側が口を閉じた角ありの「吽像」 右は口を開けた角なしの「阿像」

府社大原神社(京都府福知山市三和町大原191-1) ブロンズ製

日本の狛犬は、寺院の山門の左右に置かれる仁王像と同じように「阿吽あうん」になっていて、向かって右は口を開けた角なしの「阿像」で獅子、左側が口を閉じた角ありの「吽像」で狛犬です。「ア」で、左は「ウン」で口を閉じています。そして口を閉じた方には頭に角(つの)があります。正しくは「獅子」と「狛犬」の組み合わせだったのです。もちろん「狛犬」という言い方でも間違いではありません。呼び方は「獅子・狛犬」の獅子が消えて単に「狛犬」に定着しています。

守護獣の狛犬と神使の動物たちの違い

狛犬以外を狛狐、狛牛、狛兎、狛猿などと呼ばれることがありますが、稲荷神社の狐像や、月読神社、調神社の兎像、天満宮の撫で牛などを「狛○○」と呼ぶのは本来間違っているといわれます。


上は出世稲荷神社(京都市左京区大原来迎院町148)ですが、このように境内に狛犬と神使とされる動物を両方配置しているように、狛犬は「コマの犬」ではなく「こまいぬ」という単独の霊獣であって、「こま」と「いぬ」を分離する使い方は間違いです。単に「狐」「牛」「兎」(・・・の像)と呼ぶべきでしょう。

また、神社にいる狐や兎、猿などは「神使しんし」といい、神意を代行して現世と接触する者と考えられる特定の動物のことです。神様の使い、秘書役、伝達役ですが、狛犬は神使ではなく「守護獣」です。セクレタリーとガードマンの違いと言えばいいでしょうか。役割が違うのです。

狛犬と神使とされる動物には、以下のようなものがあります。

 

動物
大黒天
天満宮
朝護孫子寺
二荒山神社
住吉大社・岡崎神社・調神社
松尾大社
金刀比羅宮
三嶋大社
弁才天・大神神社
海蛇出雲大社
白蛇諏訪神社
稲荷神社 ※稲荷神を参照のこと。
鹿春日大社・鹿島神宮・厳島神社
日吉大社・浅間神社
熊野三山
諏訪大社
八幡宮
氣比神宮
伊勢神宮・石上神宮
武蔵御嶽神社・三峰神社など奥多摩・秩父地方の神社
大前神社
護王神社・和気神社
ムカデ毘沙門天

神使の動物ギャラリー

巡った神社の中から珍しいものなど。

  

 護王神社京都市上京区烏丸通下長者町下ル桜鶴円町385

  

 但馬では式内(名神大)養父神社(兵庫県養父市養父市場字宮ノ谷827-3)「構え獅子型」

昔の狛犬は右が阿造、左が吽造だが、向かって左が阿造、右が吽造になっている

田螺(たにし) 蜊江神社滋賀県守山市笠原町939)

神社建築

1.社殿の成立
2.境内の造り
3.神社の建物構成と名称
4.社殿の様式
5.神殿(本殿)の部位
6.鳥居とその種類
7.塀・玉垣
8.狛犬
参考:狛犬ネット、京都国立博物館、ウィキペディア

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